【書籍化】利害一致婚のはずですが、ホテル王の一途な溺愛に蕩かされています
夜はひとりでナイトプールを楽しもうと思って、念の為水着を持ってきたし。仕事で忙しい二人はなかなか会えないんだから、私に構わず仲良く過ごしてもらいたい。

「咲笑……」

「ほら、行っておいで。早くしないと、綺麗なお姉さんたちに取られちゃうよ?」

「でも……」と渋る彼女の背中を押して「ほら、早く!」と危機感を煽る。

何度かそれ繰り返したのち、やがて苦笑いしたみゆきは「ありがとう」と遠慮がちに陵介くんのもとに向かった。

うん、よかった。大好きなふたりには、笑顔でいてもらいたいもんね。安堵の思いで背中を見送る。

「――優しいんだね」

そのとき。隣に人の立つ気配と共に、艶のある低い声に話しかけられた。

顔を上げて、ハッとする。

――だれ……?

柔らかそうなダークブラウンのマッシュヘア、大きなアーモンドアイにキリッとした眉。そして、スッと通った鼻筋。女性かと見間違うほど綺麗な顔立ちだ。

身長は百八十をゆうに超えているだろうか。光沢を帯びた上質なネイビーのストライプスーツに、シルバーのアスコットタイ。トモキよりも遥かに大きく、平均身長の私を見下ろせるくらい高い。

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