【書籍化】利害一致婚のはずですが、ホテル王の一途な溺愛に蕩かされています
「ここに来たのは、君と話したいなと思って来たのであって、咎めるつもりなんてさらさらない」

その言葉に計らずも彼を見上げる。ぱちりと目が合うと、彼は優しげに微笑む。トクトクと心臓が早鐘を刻み始める。

どういうこと? “話したいな”って……つまり私に会いに来たってこと?

「――名前、教えてくれる?」

彼は本当に会場に戻るつもりはないようで、当たり前のように尋ねてきた。

「え? さえ……です。小道、咲笑」

ドキドキしながらも、自然体なやり取りに言葉が引き出されてしまう。とても不思議な人だ。

もしかして、会場で行われていた“ファーストなんたら”をここで行おうとしているんだろうか?

「さえ?か。――なら“さえ”、今日はどうしてこのパーティーに?」

わっ。いきなり呼び捨てで呼ばれてしまった。

ドギマギしつつも優しげな声に促され、また素直に質問の答えを考えてしまう。

やっぱりここで、“ファーストなんたら”をしようとしてるらしい。

「えっと??今日は、みゆきが……い、いえ友人が、恋人と別れた私を励まそうとして――」

つい、そこまで言って、ハッと口を押さえる。

< 32 / 36 >

この作品をシェア

pagetop