わけあってイケメン好きをやめました
 病院に連れていき、家まで送ってくれた恩人に対して帰れだなんて、私はなんと恩知らずなのか。
 けれど虹磨さんを部屋に上げているところを見られたくない。
 互いに恋愛感情は微塵もないとどんなに主張しても誤解され続けてきた過去の出来事が脳裏をかすめたのだ。

「徹平が来てから帰るよ」

「でも!」

「どんなふうに会社で倒れたのか、アイツに話しておきたい」

 虹磨さんと目が合うと、至極真剣な表情をしていた。
 この顔はダメ。こういうときの彼は、誰がなにを言っても引かないと知っている。

「堤はどうせ大丈夫としか言わないだろ?」

 だって、無様な姿を見せたくないもの。
 食欲がなくて、食事どころか水もとっていなくて、青白い顔で生気がない姿とか。
 睡眠不足で目の下にクマが出来ている顔だとか。
 ……好きな人には見られたくない。

「徹平くんに聞かせても仕方ないじゃないですか。会社に迷惑をかけたというなら私の責任で、彼は悪くないです」

「そういうことじゃなくてだな、」

 また頭痛がしてきたと頭を抱えた途端、ピンポンとインターフォンが鳴った。
 モニターに映っていたのはスーツ姿の徹平くんだ。走ってきたのか大きく肩で息をしている。

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