わけあってイケメン好きをやめました
「めちゃくちゃ早く着いたね」

 玄関扉を開けて出迎えると、彼は私を中へ押し込めていきなりギューッと抱きついた。
 爽やかなフレグランスの香りと彼から伝わる温もりに、胸がキュンとする。

「美和さん、大丈夫ですか?」

「う、うん」

 身体を離して視線を合わせた際に、足元に男性用の革靴が脱いであることに気づいたみたいだ。

「徹平、久しぶりだな」

「……虹磨さん」

 離れていった彼の右手が、一瞬握りこぶしに変わった。
 ああ、ダメだ。どんなに否定しても、虹磨さんと男女の仲だとまた誤解される。
 私の恋は毎回こうして終わっていく。定番のパターンだ。

「上がって? 中で話そう」

 ズキズキと痛むこめかみに手をやりつつ、もうどうにでもなれとばかりにリビングへ戻ってソファーに腰を下ろした。
 せっかく来てもらったけれど、身体が鉛みたいに重くてお茶を出す余力もない。

「今日、堤が会社で倒れた。だから俺が病院に付き添った」

 “倒れた”は言い過ぎだ。眩暈がしてよろけただけなのに。
 口を挟もうかと思ったが、なんだか空気がピリついている気がして、そのまま言葉を飲み込んだ。

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