アクセサリーは 要りません

5夜中ーSide惠美里

「じゃあ帰るな」

そう言って伊吹くんは玄関に向かった。

「惠美里、そんな顔をしたら、
俺帰れなくなるよ。

宇部先生と山口先生
明日授業できなくなるから。

おやすみ」

靴を履いた伊吹くんがドアの前で振り返った。

「おやすみなさい」

いつもならマスク越しにキスをして帰って行く。そのキスで私はいっぱいいっぱいだったけれど、軽いものだったのだと、今は知っている。

マスクはないけれど、軽いキスを唇に残して、ドアを開けようとする伊吹くんの背中に抱きついた。

「来てくれてありがとう」

「今、振り向いたら、
可愛い惠美里見てしまって、
本当に帰れなくなるから
このまま出るな。
ちゃんと鍵閉めて」
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