バーチャル彼氏
「成樹さん、エマはいいんですか?」


さっきから、エマの姿がない。


もいかしたら大学に置いてきてしまったのだろうか。


「かまわないよ。あの子も、素直になるだろうからさ」


素直に……?


言っている意味が分からず、私は首をかしげる。


「エマちゃん、本当は俺じゃなくて弟の事が好きなんだよ」


「え……えぇ!?」


エマが、瀬戸君を!?


「簡単には素直になれないんだよね、女の子って」


そう言い、クスクスと笑う成樹さん。


信じられない……。


あんなに赤面してた本当の原因が、瀬戸君だったなんて。


だけど、不器用にでも一緒にいる方法が『お兄さんを好き』でいることだったのかもしれない。


それをネタに瀬戸君に近づくくらいしか、出来なかったんだろう。
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