異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜
「あぁ、本当に申し訳なかった。今日はここで失礼するよ」
「お母様の体調がよろしくない時に無理を言ってしまい大変失礼致しました。ではまた明日の十時ごろに挨拶に伺わせてください。夜分に申し訳ありませんでした」


 耳に届いていないとは思うが母親に一言挨拶をし俺は一人で真緒の家を出た。多分俺があの場にいる事が一番母親にとって悪影響だろう。
 玄関を出る時まだ背中から母親の不安そうな泣き声が聞こえ胸がギュッと苦しくなった。


 車に乗り込み時刻を確認すると夜の十時を回っていた。今から帰ると家に着くのは夜中の十二時を過ぎる。


「お母さんも真緒も大丈夫だろうか……」 


 気になって気になってなかなか車を進めないでいる。
 カンカンカンッと階段の降りる音が鳴り響きハッと顔を上げると真緒が車のところまで来ていた。


「総介さんっ、本当に今日はすいませんでした。まさか母があんなり取り乱すとは思ってもいなくて……本当にごめんなさい……」


 真っ赤に潤んだ瞳、俺のいない所で彼女は涙を流したのかもしれない。拭ってあげる事が出来なかったら自分の無力さに嫌気がさす。
 車を降り真緒を抱きしめた。
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