異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜
 カタンカタンと古いアパートの階段を総介さんと登りアパートの玄関を開けるとふんわりとどこか懐かしいお味噌汁の匂いがスッと鼻に入ってきた。


「なんだかとてもいい匂いがするね」


 スンスンと匂いを楽しんでいる様子の総介さんを横に私はなんで匂いがするのか気になっていた。


「お母さん? 起きてるの?」


 リビングに向かって声を張るが返事はない。匂いをたどりキッチンに向かうと久しぶりに母のエプロンをつけている姿を見た。まだ母の体調が良かった頃がフラッシュバックのように蘇る。体調を崩して鬱病になってからは殆ど料理は私が作っていたのに、どうしたのだろうか。


「お母さん体調は大丈夫なの?」


「ん、大丈夫だよ。薬も飲んだしね。私が悪阻で食欲が湧かない時はよく味噌汁を自分で作って飲んだなぁって思い出してね……」


 コトンとお玉を置きゆっくりと私に近づいてくる。


「悪阻で料理するのはキツいでしょう。これからは私が作るからね。真緒、今まで頼りっぱなしでごめんね。総介さん……先日は失礼な態度をとってしまってごめんなさいね。大人気なかったわ」


「いえ、私の方こそ急に押しかけてしまって申し訳ございませんでした。あの、先程産婦人科の方で検査をしてもらった結果やはり真緒さんは妊娠していました」


「やっぱり……そうだと思ったわ」

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