異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜
「大丈夫なのかな」


 ボソリと絵里さんが不安をこぼした。


「何とかなると良いですけどね、皆んなこの演奏会のために頑張ってきたのに……」


 ハァと溜息が自然と出てしまう。私の溜息は演奏会の事だけじゃなく昼間の出来事も重なってのダブルの溜息だ。


「あれ? 今日は音楽室での練習じゃないのかい?」


 総介さんの声がして驚いて後ろを向くと楽団員のように自然と立っている総介さんがいた。


「えぇ!? なんで総介さんが!? どうしたんですか!?」


「いや、仕事帰り思ったより早く終わったんで真緒の様子を見にきたんだけど、何かあったのかい?」


 またわざわざ東京から!?


「いや、その……」


「どうした?」


 優しいバリトンボイスについ甘やかされてしまう。昼間の事はまだ伏せておこう。多分総介さんは知らないはず。まずは私だけの力でお義父さんの事を解決したい。
 楽団の事は総介さんには関係の無い事だけれど……


「今度の演奏会で使う予定だった会場が使えなくなってしまって、今幹部の人達が慌てて会場を探しているところなんです。あと二ヶ月しかないから多分会場探しも大変だと思うんです。むしろ見つかるかどうか」


「演奏会の日程は決まっているのかな?」


「はい、十二月十八日の土曜日です」


「そうか。会場か……」


 スマホを取り出し「ちょっと電話してくるね」と教室を出ていった総介さん。仕事の電話だろうか?
 本当いつも忙しいのにわざわざ私に会いに来てくれる優しい人だ。
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