異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜
 ついに開演。今日の目的のオペラはリヒャルト・シュトラウスの有名な曲、サロメ七つのヴェールの踊り。私が中学生の頃の吹奏楽コンクールで演奏した曲だ。オペラはオーケストラなので吹奏楽とはまた違った雰囲気だが、オーボエのソロは変わらない。中学生の頃は上手に吹くことで精一杯だったが大人になった今もう一度聞くとなんでもっと妖艶に、濃厚に吹けなかったんだろうとどれほど後した事か。だからこそ本場のオーケストラとオペラがどうしても観てみたかったのだ。
 生で聞いたオーケストラは本当に最高だった。オーボエのソロがなんて妖艶で重みのある音、一言で表せないくらいの心に突き刺さる演奏だった。オーケストラの演奏はオペラとの絶妙なバランスで最初から最後までずっと食い入るように目で、耳で、身体でオペラを楽しんだ。
 終わった時には凄まじい高揚感に包まれ、感動の余り溜息しか出ないなんて人生で初めてだった。私は隣に座っていた素敵な男性に「ありがとうございました」とペコリと頭を下げて足速に劇場を出た。本音を言うともっと彼と話をしたかったがそんな図々しい事言えるはずがない。あんなに素敵な人、絶対にパートナーがいるに決まってる。
 高揚感に包まれつつも一人寂しくゾロゾロと歩く人並みに沿ってウィーン国立歌劇場を出ると、空は闇のように真っ暗なのに、街は人口の光で溢れかえり明るかった。夜風が身体にあたり高揚感で火照っていた身体を一瞬にして冷まし、上着が無いと肌寒いくらいだ。
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