クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
和優は美しい。
陶器の様な白い肌。柔らかいウエーブのかかる艶やかな髪。
大きな瞳は潤んでいるようだし
長い睫毛は、その顔立ちを愁いを含んでいるかのように見せる。
ほっそりとした身体つきに、シャンタンベージュのスーツが良く映える。
その姿は、立っているだけで注目を集めた。
だが、和優自身は人混みが苦手だ。
元々が無口な方だが、パーティーでも殆ど喋らない。いや、喋れない。
『冷たい』とか『お高くとまってる』という人もいるが、
中には和優が微笑むだけで『マドンナの微笑』だと満足してくれる人もいる。
和優が人見知りなのは、幼い頃から何度も入退院を繰り返し
あまり学校に通えなかったせいかもしれない。
小さい頃から家庭教師や家政婦といった大人に囲まれて育ったので
いつの間にか、心で思う事が素直に表情や口に出せなくなってしまった。
何も言わなくても、大人たちは和優の気持ちを先回りして答えをくれる。
手を差し伸べて、必要な物を目の前に差し出してくれる…。
それが当たり前のままで育ってきたのだ。
今日は夫の為に、重い腰を上げて苦手なパーティーに出席してみた。
父の会社の晴れの日に、役員に名を連ねる夫が出席しないのは失礼だ。
夫の立場が悪くなるから自分だけでも顔を見せないと…と意気込んだのだが、
父の態度を見るとそれほど意味はなかった様だ。
帰ろうかと思案していたら、名前を呼ばれた。
「やあ!和優。来てくれたのかい?」