「お前は一人でも大丈夫」ですって?!~振る際の言葉にはご注意下さい。
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いつの間にか外の空気が春から夏へと変わり始め、もうすぐ木々が瑞々しく光輝く、新緑の季節がやってこようとしていた。
トゥルルルル……。
鳴り止まない電話。
現在『ボディ&ケア』のオフィス内は、鳴り止まない電話に混乱状態だった。社員総出で電話対応に追われている。
「はい。こちら『ボディ&ケア』です。昨日のテレビをご覧になられたのですね。はい。そちらの商品は店舗の方で販売いたしております」
「……中途採用ですか?現時点では申し訳ありませんが中途採用枠はございません。来年度の入社試験をお受け下さい」
昨夜、千夏の一日密着したテレビが放送された。すると朝からオフィスにある電話が鳴りっぱなしとなる事態となった。まさかここまで反響があるとは思ってもみなかった社員達は、嬉しい悲鳴を上げていた。そして電話の内容は、商品だけではなく、この会社で働きたいと言う問い合わせが大多数でこれには皆が驚いた。
社長室にて磯田は口角を上げると、オフィス内で鳴り続ける電話の内容を話し始めた。
「社長、すごい反響ですよ。『ボディ&ケア』の商品は何処に行ったら買えるのかと言う問い合わせが殺到している他に、中途採用して欲しいと言う問い合わせ、それに今話題の女優からCMを出すようなら自分を使ってくれないかと言う売り込みまでありました」
仕事でこんなに嬉しそうにしている磯田を見るのは初めてで、嬉しくなる反面、千夏の心は沈んでいた。
と言うのも、昨日のテレビで千夏は色々とやらかしていたのだ。
初めは、格好いい女社長としてテレビに映っていたのだが、放送の中盤辺りから何やら状況が変わり始めた。大口を開けて大量に昼食を摂る姿や、颯爽と廊下を歩いていたのだが、何も無いところで転びそうになり、陽翔に助けられたり……。その時の真っ赤になっている顔が可愛いとネットでも話題となっていた。何でも完璧にこなしていそうな彼女が、家事が苦手で困っている姿には世の中の女性も共感をもったらしく一夜にして、千夏は格好かわいい女社長として全国に知れ渡った。