白の悪魔と黒の天使
あぁ、もう無理だ。

麗華は手を振り払うと、駆け出して、あの人の手を掴んだ。

SOSを出すがように、目を潤ませて、見上げる麗華。

「…黒瀬さん、お昼の件なんですが」

麗華の言葉に、その手に一瞬視線を落とすが、直ぐに麗華の目を見て察したのか、黒瀬はあぁと、言う素振りを見せた。

「その件なら、これから外で食事をするんですが、一緒に食べながらでも」

そう言うなり、黒瀬がその場から麗華を連れ出してくれた。

が。

今度はそうはさせまいと、右近が再び麗華の手を掴む。

「灰原さんに、私も大事な話があるんですが」

その言葉を聞いても、黒瀬は引き下がらなかった。

右近の手を、麗華から払いのけるように離すと

「こちらも仕事の件なので灰原さんは、俺が連れて行きます」

呆気に取られる右近をその場に残し、さっさと会社を出て、近くの公園で、黒瀬はようやく足を止めた。

「すみません、助かりました」

大きなため息をついて、ホッとした麗華は、柔らかな笑みを浮かべた。

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