フヘンテキロマネスク

驚きで声も出ないまま、ただ鈴本くんを見つめることしかできなくて、そうしているうちに信号が点滅しだす。



「彼氏と待ち合わせしてたんなら最初っから言ってよなー。時間無駄にしちゃったじゃん」



そう言って去っていく男の人の声はどこか遠くて、鈴本くんが来てからその男の人の存在も、周りの景色も、なにもかもがかき消されていってしまうみたいに。



不思議なくらいに、鈴本くんばっかりで。



私の視界も鼓膜も思考も、ぜんぶがぜんぶ、鈴本くんで埋め尽くされていた。


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