フヘンテキロマネスク




「あ、来栖さん。宮下先生見てない?」


夜ご飯とお風呂を終えて、ようやく自由時間がやってきた。渚との待ち合わせ場所に向かおうとホテルの廊下を歩いていれば、後ろから声をかけられて振り返る。


振り向いた先にいたのは、同じクラスの林くんだった。



「宮下先生?見てないけど、部屋いなかったの?」

「それがいなくてさあ。ちょっと肘擦りむいちゃったから絆創膏貰おうと思ってたんだけど」



困ったように林くんが自分の肘に視線を落とす。長袖のシャツを捲ったそこからは確かに血が滲んでいた。なんでそんなとこ怪我してるんだろう、っていう疑問はあるけれど、どうせ男子のことだから遊んでた結果だろうな。



「私ちょうど絆創膏持ってたからあげるよ。でも消毒はないから宮下先生戻ってきたら後で見てもらった方がいいと思う」


ちょうどメイクポーチの中に絆創膏を入れていたことを思い出して、取り出したそれを差し出す。渚に会う前に少しでも化粧しようと思ってポーチ持ってきててよかった。


「まじで?ありがとう助かるわ。さすが女子」

「ううん、たまたまだよ」


「じゃあ私はこれで」そう言って去ろうとしたけれど、林くんは思いのほか不器用みたいで、患部を見ながら片手で絆創膏を貼るのに苦戦しているみたいだった。
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