フヘンテキロマネスク
それから、お互いあれが美味しい、これが美味しいと言いながらいろんなジャムを試した。渚はハニーミルクがお気に召したようで、目を輝かせているのが可愛かった。ちなみに私はあまおうが好き。渚は「あまおうととちおとめの違いがわかんない」なんて首を傾げていたけれど。
「ぜんぶおいしいね」
「ね。今度から朝はゆっくりできるかな」
穏やかな朝。些細な会話。
ただそれだけのことが、ふいにどうしようもなく愛おしいと思った。何気ない日常をここまで彩ってくれるのは、きっと渚しかいないんだろうなって。
想いが溢れて「しあわせだなぁ」と呟いたら、その声が重なった。驚いて顔を見合わせて、それからまた笑う。
「――――ねえ、真咲。結婚しよっか」
まるで、頭に浮かびあがった言葉をそのままぽろりとこぼしたようだった。用意したような飾った言葉じゃなくて、ただ想いをありのままに。
――――価値観がズレてるなと思うことはある。だけど、その差異を埋められるものが愛なのだとしたら、私たちはもうそれを持っている。貫く覚悟も。