フヘンテキロマネスク
「いや、喧嘩じゃない」
「だよね。ふたりが喧嘩したとか聞いたことないし想像つかないもんなー」
確かに言われてみればそうだ。私と保科くんって喧嘩という喧嘩はなかった気がする。だからこそ順調だと思ってたんだけど、それは違ったみたい。
日菜が上靴に履き替え終わったのを確認して、ゆっくり歩き出す。まるで足に鉛をくくりつけられているかのように足取りが重い。
「……あ、じゃあ別れたとか?」
隣から発せられたその声も、ボリュームは小さいのにやけに響いたように感じた。思わず反射的に足が止まる。