【SR】秘密
「大変だね。俺もこうして飲み会の翌日の仕事は辛いよ。
親は知ってるの?」


ぴくりと反応してしまったけど、すぐに笑みを顔に張り付ける。


「知る訳ないよ。怒られちゃう!
居酒屋でバイトしてる事になってるの。
親バレしたら、きっと友達と遊びに行くのも禁止されるわ。
でも、この仕事好きだから続けたいの」


高額な収入。


この一年でだいぶ貯金も貯まっていた。


普通の仕事であの人の様にちまちまセコセコ働いていてはラチがあかない。


店の名前に惹かれる様にフラフラと面接に来た時、提示された給料に入店を即決した。


そして今、あたしは確かに成功の階段を昇っている手応えがあった。


……あたしは、あの人達の様に醜く腐ったものにはならない。


「……偉いよ、その年で仕事に誇りを持つなんて。
……俺も、少しはお手伝いができるかな?」


「嬉しい!いっぱい会いに来てくれる?」


込み上げる高揚感。


掴めそうな客にテンションが一気に上がる。


そのせいで、異常な視線にあたしは気付けない……。


「あぁ。それより飲み過ぎないようにね」


辺りの熱気を見回しながら、自分のお酒に全く手をつけていない貴一さんが言う。


「そうね、まだ慣れてないせいか呑むと記憶が飛んだりして……。」
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