That's because I love you.
洗い物は多田が請け負ってくれたので、明広はまりあをマンションの下まで送った。

「本当に家まで送らなくていいの?」
「大丈夫です!明広さんレポートで忙しいですし…。」
「…じゃあ…今日は本当にありがと。気を付けて帰って。」
「はい…っ!おやすみなさい~。」

まりあと別れた明広は、マンションのエレベーターを待つ。
しかしすぐ、そわそわと落ち着かなくなって来てしまった。

(…全然まりあと話せなかったな。……。)

まりあの笑顔をもう少し見たくて、一緒に居たくて、堪らなくなる。
気付いたら踵を返し、彼女を追い掛けていた。

「……まりあ…!」
「……っ…!」

振り返って明広を視界に入れたまりあは、何故か一瞬泣きそうな表情をした。

「…やっぱり駅まで送る。」
「…良いんですか?忙しいのに…。」
「往復で15分くらい、どうってことないよ。」
「……。ありがとう…っ。」

しかし彼女はすぐにふにゃっと顔をほころばせたので、安心した明広はすぐ、気のせいだと結論付けてしまった。

「今日は騒がしいオッサンの相手させてごめんね。」
「とんでもないです!多田さん、優しくて楽しい方ですね~。少し森さんに似てるなぁって思いました~。」
「あー。見た目は全然違うけど、中身は確かに似てるかも。あの鬱陶しいテンション…。」
「ふふ…っ。多田さんと明広さん、すごく仲良いんですねぇ~。」
「仲が良い?うわ、寒気が…。何処を見てそう思ったの。」
「だって二人の会話のテンポすごく良かったし、何か親友みたいな雰囲気でしたし~。」
「アイツと親友なんて勘弁だよ、ウザ過ぎる。…まぁ感謝はしてるけどね。」
「多田さんのために、小学生の頃から毎日ごはん作ってるんですもんね…っ。」
「アイツが作ると悲惨なことになるから、仕方なくねー。」

笑い合って喋りながら、駅までの道のりを歩く。
駅に着き真っ直ぐ改札に向かおうとするまりあの手を、明広は掴む。

「…まりあ、こっち。」
「…ふぇ…?」

改札の手前にある、トイレへと繋がる小道に、まりあを連れて行く。
明広は周囲を軽く見回し人が居ないことを確認した後、彼女の小さな唇にそっと口付けた。

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