That's because I love you.
「他のメンバーはあんまりやる気ないみたいだけど、真面目なメンバーが一人でも居てくれて良かったよ。」
「真面目なメンバー?」
「望月さん。」
「私?真面目かなぁ…普通だけど…。」
「すっごく真面目だし、頭も良いじゃん。皆に推されてリーダーになっちゃったけど俺あんまり自信なくてさ…サポートしてもらえると嬉しい。」
「うん、もちろん…!私に出来ることあったら、何でもするよ~。」
「…ありがとう。」

男がほんのり頬を染めて微笑んだのを見た途端、明広の胸にチリッと、不快な刺激が走る。

(……わかりやす…。…まりあのこと見過ぎだろ。)

明広はほぼ無意識にまりあの腕を掴み、ぐいっと自分の方へ引き寄せ、男から距離を取らせていた。
驚いたまりあに見上げられ、すぐにハッと我に返る。

「…じゃあまりあ、僕次の講義3階だから。」
「…え?」

明広は自分が無意識に取ってしまった謎行動に内心焦りながらも、必死に冷静を装い無表情で言葉を放つと、その場を去る。

「か…加賀見くん、資料ありがとう。また明日ね…っ!」
「…あ、うん…。」

まりあは慌てた様子で加賀見の元を離れ、明広を追い掛けて行く。

「…………。」

加賀見は明広の後ろ姿を一瞬じろっと睨んだ後、踵を返して歩き出した。



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