That's because I love you.
「…明広さん…っ!」
「……!」

明広が二人の側を離れた後、すぐにまりあは明広の元へ駆け寄って来た。

「私、次2階なので…途中まで一緒に行きたいです。」
「…………。」

何故かホッとしてしまっている自分に気付いた明広は、彼女にそれを悟られない様、すぐに視線を前方に戻す。

「…さっきの男はいいの?」
「…ふぇ?資料も受け取ったし、全然…」
「あれ誰ー?」
「…情報処理の講義で一緒の加賀見 凜人(カガミ リヒト)くんです。グループワークで一緒に課題をしてるお友達で…。」
「…友達ねぇ…。」
「…はい…。…っ…、えと…。」

明広の不機嫌は、そのまま声に出てしまっていたらしい。
彼の珍しく冷淡な声色に、まりあは不安そうに戸惑っていた。
それに気付いた明広は、先程の加賀見の優しい物腰を思い出したこともあり、また少し焦る。

(…どうしたっていうんだ僕は。…アイツとえらい違いだし。まりあ、怖がってるって…。)

一度静かに息を吸って吐き、自分を落ち着かせた後、普段通りの穏やかな声色を引っ張り出す。

< 106 / 165 >

この作品をシェア

pagetop