That's because I love you.
「…まりあ。今週の土日、どっちか空いてる?」
「ぁ…今週も日曜日にバイトが入ってて、土曜日なら…。」
「じゃあ土曜日、一緒に何処か行く?」
「…!はい…っ!!」

まりあは先程の不安そうな表情から一転、一気にぱぁっと顔を輝かせて笑った。
安心と共に胸が高鳴った明広は、思わず彼女の小さな頭を撫でながら微笑む。

「…久しぶりに遠出でもいいね。行き先はまたLINEで決めよう。」
「はい~。ありがとう、嬉しいです…っ!」

言葉通りとても嬉しそうに笑うまりあを見て取り敢えず安心した所で、彼女と別れ3階へと向かう。
しかし自分自身の不可解な行動に未だ納得がいかない明広は、階段を上りながら思わずはぁ、と大きな溜め息を吐いた。

(…あんなことでイラつくとか…何でだよ。…それに、さっき…。)

先程の自分の行動の意図を、内心で振り返ってみる。

ーーー先程自分は、まりあを何とか加賀見から引き離したかった。
自分があの場から去れば、まりあは自分について来てくれると思った。
そして自分の思い通りに動いたまりあを見て、ホッとしたのだ。

(……これ以上ない程僕らしくないけど…まりあとは長い期間一緒に居るし、独占欲くらいは出て来てるのかも。…大事なペットみたいなものだしな。)

そう結論付け混乱を抑え込んだ明広は、すっかり普段通りの冷静沈着な自分を取り戻し、平静そのものの精神で講義を受けていたのだった。



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