That's because I love you.
一人暮らしのアパートの狭いワンルームの部屋に帰ったまりあは、夕食を作って食べる間も、風呂に入る間も、ずっと華から聞いた話についてぐるぐると考えていた。

"御木本サン、男女問わず誰に対しても無関心で冷酷で、性格凄い悪いよ。"
"来る者拒まずで女とっかえひっかえしてた。"
"浮気も悪気なくやってのける最低最悪の男だって…。"
"あの人が相手にするの、男慣れしてる女だけだって聞くよ。"

(……7年前あんなに優しかった御木本さんが…どうして…?私なんか相手にされないかも…、…でも…。)

"怪我無くてよかったよ。じゃあ、講義あるから。"

7年ぶりに聞いた、更に低くなった彼の声が、脳裏に蘇る。
彼は今日一度も微笑んでくれさえもしてくれなかったが、何度か自分と目が合った。
その瞳は、思い出の中の彼と同じ、優しい瞳をしていた。

(……諦められないよ…。ずっとずっと好きだったのに…やっとまた会えたのに、何も行動しないで忘れるなんて、無理だよ……!)

(…華ちゃんが、"今は彼女居ないみたい"って言ってた…でも御木本さんが"来る者拒まず"なら、いつまた次の彼女が出来るかわからない…。…急がなきゃ…他の女の人と付き合う御木本さんなんて見たくない…。…そんなの耐えられない…っ…。)

まりあはその日の夜中、ベッドの中で、一人覚悟を決めたのだった。


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