That's because I love you.
クリスマスの夜
状況は全く変わらないまま、クリスマスがやって来た。
イブの昼間は二人共バイトが入っていたため、デートは25日にする約束だったが、24日の夜、明広のスマホにまりあから呼び出しのメッセージが届いた。

(…明日のデートを断りに呼んだんだろうな。)

ーーー今日、まりあと会うのは最後になるのであろう。
明広は重い足取りで、彼女との待ち合わせ場所へ向かう。
鞄の中には、加賀見に声を掛けられる以前に買っていた、彼女へのプレゼントがあった。

(…こんなの持ってきてどうするつもりだよ。…でも折角だし…今まで"好き"も言わない僕なんかと付き合ってくれたまりあに、感謝と謝罪の気持ちも兼ねて渡すか…。…受け取って貰えるかは別として。)

彼女との待ち合わせ場所、駅前の噴水広場に着く。
粉雪が降り注ぐ中、まりあがこちらに振り返った。

「……………。」

白い景色の中で、彼女の深い碧の瞳だけが色をつけているような錯覚を起こす。
その大きな瞳には今自分が映っているが、彼女の心にはもう、自分は居ないーーー。

< 130 / 165 >

この作品をシェア

pagetop