That's because I love you.
(…俺に未練が残らない様に、きっぱり振ってくれた。恋人と上手くいってるならわかるけど、望月さんはそうじゃなかったのに…返事を引き延ばしたり、曖昧なことを言ってキープすることだって出来たのに、それをしなかった。……変な話だけど…振られてさらに、君の良さを実感したっていうか…。)

けれどももう自分には、彼女を諦める道しか残されていない。
脳裏には彼女との思い出が、止めどなく溢れ出していた。



『…私…望月まりあっていうの。よ、よろしくね
、加賀見くん。』

『ばれん…しあが?ご、ごめんね、私ブランドとか疎くて…。でもすっごく素敵なバッグだね…っ!』

『課題の発表もうすぐだね~、緊張する~。あ、私おうちでね、6章目少し手直ししてきたの。加賀見くん、良くなったか見てくれる~?』

『うん、今日の放課後デートなの…っ。髪型気合い入れてきちゃった~。』



優しくて穏やかで、真面目で、……彼氏に一途で。
そんなまりあのことが、心から可愛いと思った。
ーーー本気で、好きだった。

(……望月さん。君と知り合えて、友達になれて本当によかった。…いつか失恋の痛みが癒えたら、また友達に戻れるかな。…俺の好きな店に、また一緒に行ってくれるかな…。もしそんな日が来たら…その時は、グループワークのメンバーのみんなや高橋さん、…それと、…御木本さんも一緒に……。)

加賀見は頬に伝う涙を拭うこともせず、叶わなかった恋の相手へ、想いを馳せていたのだった。



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