That's because I love you.

愛の言葉

大晦日の夜。
明広とまりあは、まりあの部屋のキッチンで一緒に年越し蕎麦の準備をしていた。

「明広さん～。お蕎麦準備できました～っ。」
「よし。海老天乗っけよう。」
「わぁ～い！豪華～っ。」

目を輝かせて蕎麦に見とれるまりあを、明広は完全に気を許した様な、柔らかい微笑みを浮かべて見つめる。

ーーー二人の心がようやく結ばれたクリスマスイブの翌日から、明広はまりあの部屋に転がり込んでいた。
多田の食事の世話をしに時々自宅にも帰るが、冬休みで大学の授業が無いこともあり、二人は仲良く半同棲生活を送っていた。
それは、明広からまりあに頼み込んだことだった。
明広は自分の中にずっと燻っていたまりあへの恋愛感情を自覚した途端、彼女のことが四六時中愛おしくて堪らなく、傍に居たくて仕方がないのだ。

温かい蕎麦を、お茶とみかんが乗った炬燵テーブルに二人で運ぶ。

「いただきま～す。」
「いただきます。」

テレビで年末恒例の歌番組を流しながら、二人で年越し蕎麦を食べ始めた。

「美味しい～。すっごく美味しい～っ。」
「うん。店より美味しい。」
「はい～っ。」
「まりあが隣に居るから尚更美味しい。」
「はい……ふぇ！？」
「…ふっ。」

明広から放たれる甘い台詞に未だ慣れていないまりあは、顔をぶわっと一気に真っ赤に染めぎょっとして彼を見上げる。
その流れは最近二人の間で度々繰り返されており、明広はその度に、おかしそうに吹き出して笑っているのだった。