That's because I love you.
蕎麦を食べ終わると、引き続き歌番組を流しつつ、お茶を飲みみかんを食べながらまったりと年越しのその時を待っていた。
まりあは密かに隣に座る明広を見上げると、ぽっと頬を赤く染める。

ーーー年越しの夜、自分の部屋に大好きな人。
しかも一週間程前、彼も自分のことを好きだと言ってくれ、長らく続いた片想いがやっと実ったのだ。

(…ふぇ~…。幸せすぎて、くらくらしてきたよぅ…っ。)

テレビ画面では、今人気を博している男性アイドルグループが観客の黄色い声と共にトークを繰り広げていたが、まりあの目には彼らはへのへのもへじの如く霞んで見えていた。
隣の明広がキラキラと眩し過ぎるせいである。
するとふと彼が、炬燵テーブルに頬杖をつき無表情でテレビ画面を見つめながら、ぼそっと呟いた。

「…まりあはSYAQUAとか好き?」
「しゃくあ?あっ…あぁ、SYAQUA!」
「…鈍。今まさにテレビに出てるじゃん。」
「明広さんに見とれてて観てなかったです…。」
「…は?」
「SYAQUAはですね、デビュー曲しかよく知らなくて。回れ~、まわぁれどこまでも~、っていう曲~。」
「…まりあが洋楽歌うの下手なのは英語が難しいからかと思ってたけど、日本語の曲も下手なのか。」
「ふぇ?本気出せばちゃんと歌えるもん~っ。」
「…顔は?好みな奴居るの?」
「居ません~。」
「即答…。」
「だって私、明広さん以外の男の人かっこいいって思ったことないんです~。」
「…………。」

まりあはみかんをもぐもぐと食べながら、普段と変わらぬ口調で平然と言い放った。
相変わらず唐突に"直球好き好き攻撃"を仕掛けてくるまりあに、明広は思わず照れて頬を染める。

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