That's because I love you.
「ふふふ…っ。明広さん、どうしていつも森さんにそんなに冷たいんですか~。」
「アイツはちょっと気を許すとすぐ調子乗るから、あれくらいがちょうどいいんだよ。はー、明日大学行ったらまた見せて見せて言ってくんのかな…だる…。」

明広は溜め息混じりに呟きながら纏めた荷物を持ち、玄関に移動する。
まりあも明広が忘れたマフラーを持つと、彼に続いた。
明広は玄関の床に荷物を置き靴を履くと、まりあの方へ向き直る。

「まりあは今日、高橋さん達と会うんだっけ?」
「はい~。明広さん、冬休み最後のバイト頑張ってくださいね!」
「ありがと。…じゃあ、長い間居座ってごめんね。楽しかった。」
「とんでもないです!私も明広さんと一緒の毎日、すっごく楽しかったです…っ。」

まりあがふにゃっと幸せそうに笑うと、明広も目を細めて柔らかく微笑む。
気付いたら彼女の顎に指を掛け持ち上げ、柔らかく小さな唇にそっと口付けていた。
触れ合うだけのキスの後、まりあの小さな体をぎゅっと優しく抱き締めると、まりあは嬉しそうに明広にしがみつき、すりすりと頬を彼の肩口に擦り付けて甘えた。
まりあへの愛おしさが募った明広は、心の奥底から自然と湧き出てきた言葉を、自分の出来る限りの優しい声色で囁いた。

「……愛してる。…まりあ。」
「………っ…!!」

明広はまりあを抱き締めていた腕をほどくと、顔を耳まで真っ赤に染めて固まっている彼女の手からマフラーを取り上げ荷物を持ち、片手を軽く振る。

「…じゃ。」

少し頬を染めぼそっと呟く明広に、まりあは同じ愛の言葉を返そうと、声がつかえる熱い喉から必死に声を出そうと奮闘する。

「…っ…、…ぁ、明広さん…っ!私も…あい、あい、…あぁい…っ!」
「……ふっ…。」

何とか声は出たが、まりあにはその言葉はレベルが高かったらしい。
恥ずかしくて全て言えないまりあに、明広は思わず吹き出してしまう。

「まりあが言えるまで待ってたら日が暮れるし、もう行くねー。」
「待ってぇ~…っ!」
「そんな焦らなくても、また今度でいいよ。…ずっと一緒に居るんだし。」
「…はい…っ!今度、絶対言わせてくださいね…!!」

涙を浮かべながらも満開の笑顔を見せたまりあに、明広も愛おしそうに微笑み返すと、部屋を出たのだった。






END.

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