That's because I love you.
まりあが観たいと言った映画は、グルメ系のコメディ映画だった。

(女の子だしイケメン俳優が出てる恋愛映画だと思ったのに、グルメって…。)

しかしこれが、中々に面白かった。
料理が苦手な育ての親の代わりに毎日料理をしている明広は、興味深く映画を観ていた。
ふと隣のまりあを見やると、目を輝かせよだれを垂らしそうな勢いで料理に見とれていた。
その子どものような姿に、思わず頬が緩む。
エンドロールまでしっかり観た後席を立つと、まりあがコートを羽織りながらほくほくとした笑顔で話し掛けて来た。

「映画おもしろかったです~っ。一緒に観てくれてありがとうございます…!」
「いーえ。僕も普通に楽しんでたし。面白かったよね。」
「ほんとですか…っ。」
「うん。料理見てよだれ垂らしてる君が特に面白かった。」
「ふぇ…っ!見られちゃってたの?やぁ~。」

まりあは最初こそ緊張でガチガチだったが、明広が華の話とは違い軽口を交えながら気さくに話してくれるので、どんどん緊張は和らぎデートを楽しめていた。
明広が空になった紙コップを二人分、おもむろにドリンクホルダーから取り上げたので、まりあは慌てて礼を言う。

「あ…すみません…っ。ありがとうございます…!」
「いーえ。」

前を歩く明広を、まりあはそっと見上げる。

(…背、高いなぁ…。)

ストライプ柄のTシャツに濃いネイビーのジャケット、黒のジーンズ、革製ボディバッグにシルバーのタグネックレス。
クールでシンプルな服装は、彼に驚く程よく似合っていた。
ドキドキと高鳴る胸が苦しくて、無意識に自分のバッグのショルダーストラップをぎゅっと握る。

(それにやっぱり、御木本さんは優しい…。雰囲気は昔とは少し変わったけど、根っこは一緒だなぁ…。…本当に夢みたい。御木本さんとデート出来てるなんて……。)

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