That's because I love you.
「…今日はありがとね。」
「私こそ…っ!」
「次は僕が行き先とか考えるよ。…またね。」

人気の無いアパートの門の前で優しく髪を撫でてやると、まりあは「は…は、はい、また…っ!」と真っ赤な顔でどもりまくる。
こんなウブ過ぎる女の子は初めて相手にするので、キス一つするのも何故か悪いことをする気分になってしまうが、それをした時の彼女の反応を見てみたいなどとも同時に思ってしまう。

(…向こうから"付き合って"って言ってきたんだし…いいよな?しても…。)

髪を撫でていた手を下に滑らせ、優しく頬を撫でる。
するとまりあは顔を一層赤く染めカキンッ、と固まってしまう。

(…初めてだろうな。…優しくしてあげよう。)

目を合わせて微笑むと、ゆっくりと唇を重ねる。
小さく震えるまりあのこめかみを撫でてやりながら、数回角度を変えて重ねた。

「…おやすみ。」
「………っ…。」

キャパオーバーになったまりあは、声も出せなくなったらしい。
真っ赤な顔から大量の湯気を出し、こくこくと頷いている。
予想以上の反応に我慢出来ず吹き出しながら軽く手を振ると、また駅に向け歩き出す。

帰り道、明広は自宅に着くまでずっと、まりあのことを思い出していた。
純粋でウブで少し抜けた彼女を思うと、無意識に頬が緩む。
それに気付いた明広は周りからそれを隠す様に、思わず片手で口元を覆う。

(…そういえば今日、何かいっぱい笑った気がする。普段使わない表情筋動かしたせいで、頬に違和感あるし…。)

まりあと話していると癒され胸が暖かくなり、普段滅多に笑わない自分が何度も自然と笑っていたのだ。

(……あんな女の子が、この世に居るとはなー…。)

自分を見上げて来るまりあの、幸せそうな表情が脳裏に蘇る。
自分を心から慕ってくれているのが伝わってくる様な、キラキラと眩しい碧の瞳ーーー。

(…僕は女に絶対恋愛感情なんか持てないし、付き合った相手に本気になられるのがウザかった。…でもあの子なら、何故か許せるんだよな。…寧ろ、結構居心地良かったかも…。)

女の子とのデートが初めて"楽しかった"と感じた、夜だった。

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