夜を照らす月影のように#3
「……その物の怪って奴、あれ?」

メルが指を指した方を見てみると、少し離れた場所にある、廃ビルの上空ではサメの形をした物の怪が空を泳いでいる。

「そうだよ。メル、今から戦闘になるけど大丈夫?」

僕の言葉に、メルは少し黙った後「僕、戦闘苦手なんだ……」と呟いた。僕がメルに目を移すと、メルは微笑む。

「でも、大丈夫……その代わり、ノワールを全力で支えるから」

そう言って、メルは背丈くらいまである杖を作り出すと構えた。

僕はメルと目を合わせると、頷く。そして、空を飛んで物の怪の元に向かった。

空を泳ぐように飛ぶ物の怪と目を合わせると、物の怪は猛スピードで突進してくる。僕はそれを避けると、魔法で刀を作り出した。

「……空の上じゃ、戦いにくいな……どこかに、誘導出来たらいいんだけど」

「…………なら、僕が誘導する。ノワールは、どこかのビルの屋上で待ってて」

「じゃあ、あのビルの屋上で待ってる。頼んだよ」

近くにあるビルを指さすと、僕はそのビルの屋上に着地する。すぐにメルの方を見てみると、メルは物の怪を引き連れて僕の方に向かって、飛んで来ていた。

……いくら何でも早過ぎないか……?メルから目を離していたの、数秒だけだよね!?

そう心の中でツッコミを入れつつ、僕は刀を構える。
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