俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
「うわぁぁぁんっ、ハヤセ…っ!!」
「…エマお嬢様、」
居ても立ってもいられず、逃げるように駆け寄った。
今日は執事は観客のようなもの、そんなルールなんか知らないっ。
ここは未来の旦那様との交流の場だからこそ、わたしが一番に自ら執事の元へ向かってはいけないとしても。
そんなの知らない、そんなの知るかっ。
「あいつ来たっ!わたし帰りたい…っ」
「エマお嬢様、お気持ちは痛いほどに分かっております。ですが…お戻りください」
「いやだ…、かえる、」
「エマお嬢様、」
そう言ってるハヤセだって、わたしの腕を掴んで離そうとしないくせに。
今だって絶対に離すものかってくらいに強く掴んでくる。
「おい早瀬さん。さすがにそれはSランクだとしてもまずいだろ」
「エマお嬢様の婚約者もいるんだぞ。執事として立場を弁えろ」
こんなこと普段だったらないのに…。
まるで他の執事は、Sランク執事の弱味を握って袋叩きにしてるみたいだ。
「…あぁ、わかってる」
震える声でつぶやいて、ハヤセは優しく見つめてきた。
大丈夫、俺が見守っていますから───なんて言って落ち着けてくれているつもりなんだろう。
……手、離されませんけど。