ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜
「ちょっとした事情があって」
「いきなり噛まないって、なに?」
「ノエルが、そう言ったの?」

 後ろを向いたまま、ルキくんが静かに話す。

「怪我したところ、傷がなくなったの。こんなの、おかしいよね?」

 振り向いたルキくんが、私の(ひたい)に手を当てた。

 ……なに、してるの?
 目の前がぼんやりして、意識が遠くなる。眠いのを我慢しているときに似ている。
 まばたきを1回、2回としたら、ハッと目が見開いた。

 あれ、今まで何してたんだろう。どうして、保健室に来たんだっけ?

「キミは、白川村(ここ)にいない方がいい」

 何を話していたか思い出せないけど、これだけは分かる。ルキくんは、私を嫌っているんだ。

「みんな、私を追い出したくて仕方ないんだね。ルキくんまで……ひどすぎる」

 ドンッと体を押し退けて、保健室を駆け出る。

 キライ、キライ! 白川村なんて、大ッキライ!

 頑張って話しかけていたら、みんなと分かり合えるかもしれないと思っていた。
 最初から居場所なんてなかったのに、バカみたい。
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