ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜
「急に入って来ないでよ! ノックぐらいしてよね?!」

 そばにあったクッションを抱きかかえて、肩をすくめる。あの夢のあとに出てこられると、気まずさが(すさ)まじい。

「ここ、俺の部屋なんだけど」

 首のうしろに手を当てて、あきれた顔をしている。

 そういうことじゃなくて……もっと他にあるでしょう。一応、女子なのに。

「で、どんな夢見てたの?」
「……な、なんで?」

 となりに腰を下ろすルキくんが、顔をのぞき込む。

「さっき俺の名前呼んでた」
「ほっ、他には何か変なこと言ってなかった?」

 そっとクッションを下げて、今思い出したと言うように。

「……そばにいてって。意外と可愛いこと言うんだな」
「そっ、そんなことほんとに言ってた?!」
「……さあ」

 肩が小さく揺れている。笑いをこらえている証拠だ。

「ぜーったい言ってない! からかうなーッ!」

 持っていたクッションでルキくんの胸をバシバシとたたく。

 死ぬほど恥ずかしい。すぐにでも(きり)になって消え去りたい。
< 50 / 158 >

この作品をシェア

pagetop