置き去りにされた花嫁をこの手で幸せに
またカヤックに乗り、ショップまで戻ってきた。

おじちゃんにお礼を言い、私たちはレンタカーでホテルまで戻るがさすがに一日動き回ったせいか車に揺られると眠くなってしまった。
これは仕事、と言い聞かせ寝ないように睡魔と闘っていると横から加賀美くんが笑いながら声をかけてきた。

「疲れただろ。寝てろよ。ホテルに戻ったら起こすよ」

「そんなの悪いよ。加賀美くんだって疲れてるのに。それにこれも仕事だし、そもそも今も勤務時間中だし」

「いいんだよ。それに槇村だいぶ痩せただろ。だから体力落ちてるんだよ。遠慮しないで寝とけって」

ちょうど赤信号で止まったタイミングで私は車のリクライニングを倒された。
加賀美くんの着ていたパーカーを膝にかけてくれ少し寝るよう促された。

私は加賀美くんが覆いかぶさってきて助手席のリクライニングを倒してくれたことに一気に顔が火照るのを感じた。加賀美くんの行動に胸がドキドキしてしまい彼に私の気持ちがわかられてしまわないか不安になった。

ついこの前捨てられたばかりの花嫁にちょっと優しくしたらつけあがったとでも思われるのではないかと私は怖い。同情でしかないと言われるのが怖い。

でもこの1週間、加賀美くんの行動にドキドキさせられたのは本当。
今までは嫌味な同期だとさえ思っていたはずなのに今は彼のことを今までと同じ目で見てない事に気が付かざるを得なかった。

こんなの不純だ。
ちょっと優しくされたからって私は好きになるの?
冷静にならないとダメ。
また失敗するよ。
私の中でそう叫ぶ声が聞こえる。

私は気持ちを悟られないよう目を閉じた。
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