置き去りにされた花嫁をこの手で幸せに
コンコン

ノックする音が聞こえる。
あれ?ここどこだ?

コンコン

カーテンの間から差し込む陽の光を見つめ頭が働き出してきた。

ここ石垣島だ!
ハッと振り返ると隣で梨花ちゃんがまだ寝ている。

コンコン
「竹内!出てこいよ」

マズイ。
梨花ちゃんを慌てて叩き起こした。
あまりの起こし方に梨花ちゃんは飛び起きてきた。

「何なんですか!?もう」

「マズイ。寝過ぎてる!」

私はそういうと慌ててドアを少しだけ開けた。

「だ、大介くん。おはよ。ごめん、今すぐに支度するから下で待っててくれる?10分だけ頂戴」

「槇村さん?あれ?ごめんなさい。部屋間違えました」

「間違ってない…と思う。とにかくすぐ支度するからね」

そういうとドアを閉めた。
訝しげな表情の大介くんが部屋から離れるのを見ると私は一目散に梨花ちゃんの部屋を飛び出し、
「梨花ちゃんも10分で支度して!ロビー集合だからね」

そう言い残して私は部屋まで走り出した。

部屋に戻り洗面と化粧を適当にして着替えた。髪の毛は手櫛で整えながらエレベーターに乗り一つに束ねた。ハネを直す時間もブラシで梳かす時間もなかった。

ロビーへ降りると梨花ちゃんもほぼ同時に到着した。
私と同じように凄い形相で支度したのだろう。
2人してなんとなく服装が乱れ、髪の毛も無理やりまとめた感じになっていた。
化粧は最低限のことしかできておらず、昨日の飲酒の名残か瞼も腫れている。

私たちの惨状を見て加賀美くんも大介くんも呆気に取られていた。
2人して私たちを上から下まで見てきて苦笑し始めた。

「何があった?お前らひどいブスだな」

「酷い。その言い方は酷すぎる」

「仕方ないだろう。本当のことなんだから。東京のOLのイメージが悪くなるくらいに酷い。顔を洗ってファンデーションに眉毛描いただけだろ。口紅つけろよ。瞼腫れてるし唇の色がないし顔色最悪だろ」

ククク…
横で大介くんも笑い始めた。
私が横目で大介くんを睨むと梨花ちゃんも大介くんを睨んでいた。

「やばいな。この顔でよく出てきたよ。どんだけ飲んだんだ?俺に怒られてしょげてるかと思ったらやけ酒してるとは」

「すみませんでした。心を入れ替えます。私情は挟みません。仕事をさせてください」

加賀美くんは笑うのをやめ梨花ちゃんに向き合った。

「竹内、昨日までの顔つきと違うな。やってくれるんだろうな。もし今の言葉に嘘があれば本当におろすからな」

「はい。もう一度チャンスをください」

加賀美くんは上に立つ素質のある人。
梨花ちゃんのこともきっとわかってくれたはず。うまくまとまってよかった。
ホッとしているとまた加賀美くんは笑い始めた。

「お前ら本当に凄いよ。俺らコーヒー飲んでくるからもう一度支度してこい。それじゃ相手に失礼だから。槇村、ボタンずれてるから直してこいよ。ほら、2人ともやり直し!」

大介くんと笑い転げながらカフェに行ってしまった。
改めて梨花ちゃんの顔を見ると確かに顔は浮腫んでるし洋服もよれよれな感じが否めない。
私もよく見たらカーディガンのボタンがずれている。

お互い目を合わせると笑い転げながらお互い部屋へ戻ってやり直しにかかった。
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