置き去りにされた花嫁をこの手で幸せに
***
どういうことだ?
辞めたい?
確かに最近になって阿川の相手がうちのホテルのフロントだと噂が聞こえてきた。
同期からなんとなく聞いていたから俺は知っていたがあえて広める話でもでもなく、ましてや槇村の耳に入れることではない。だから黙っていた。
同期の奴も広めるようなことをするやつではない。
ただ、人の噂に戸は立てられないとはよく言ったもので俺の耳にも聞こえてきていた。
それが槇村にも聞こえてきたのだろう。

槇村にとってどれだけ残酷な現実だろう。
同僚に結婚相手を取られた上に一緒に働かなければならないとは、なんて酷なことをするのだろう。

阿川も相手も辞めさせたいと思うが不当解雇になってしまう。
2人はどんな気持ちでここで働き続けるのだろう。
俺は悔しくて手を強く握りしめた。
俺がしてあげられることはないのだろうか。

あの後から俺は出来る限り槇村のそばにいた。周囲から守ってやりたいと思っていたが同情されてると思っていたのか。
同情なんかじゃない、俺は槇村のことが好きだから守ってやりたいんだ。
ただ、俺が目立ちすぎるから今、別の噂が立っているのも知っていた。

捨てられた槇村が俺に乗り換えようとしてそばにしがみついている、と。

俺がそばにいたいだけなのに槇村が悪女のような言い方をされ始めている。
それも彼女の負担になってきているのか。

俺はどうしたら彼女を守れるのだろう。

何で声をかけたらいいのか分からなかった。
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