置き去りにされた花嫁をこの手で幸せに
手を繋ぎ部屋へ入ると現実に戻された。

初めてのお泊まりだ……

「奈々美、先にお風呂入るといいよ。冷えただろう」

「うん。ありがとう」

私はなんでもないかのように振る舞い、下着やパジャマを持ってバスルームへ向かった。
急に恥ずかしくなりドキドキしてきた。
念入りに洗い、バスルームから出ると隼人はソファでビールを飲んでいた。

「遅くなってごめんね」

「いや、俺も入ってくるわ。髪の毛乾かせよ」

「うん」

隼人は私の顔を見ることなくすぐに入りにいってしまった。
すると10分もしないですぐに出てきた。
髪からはポタポタと水が滴り落ちていた。

「よかった!間に合った」

ん?

「やっぱり俺が乾かしてあげたいと思ってさ。慌てて出てきたよ」

そういうと私の手からドライヤーを取ると隼人が乾かしてくれる。
私がするよりも丁寧にする仕草に、慣れてるの?とちょっと拗ねたくなった。

「隼人、付き合う人みんなにこうやってあげるの?」

「え?まさか。初めてだよ」

「嘘。手慣れてるもん」

「そんなことないよ。何かしてあげたいなんて初めてだから。今まで付き合った人はいるけどこんなことするのは奈々美が初めて。で、最後だよ」

「本当に?」

「嘘じゃない」

鏡ごしに見る隼人の顔は真剣そのもの。

「信じる……」

俯き気味にそういうと、

「奈々美がやきもち妬いてくれるなんて嬉しいよ」

そういうと首筋に音を立てキスをした。

ひゃっ…

ドキッとしてあげた声に隼人は満面の笑みを浮かべていた。

「隼人も乾かしてあげるね。私よりビショビショだよ」

慌てて出てきた隼人はなんとなくよれっとしていて、いつものカッコいい隼人からは少し気が抜けたような雰囲気になってる。

「やってくれるの?」

「うん」

私がドライヤーを受け取ると交代で隼人が座り、乾かし始めた。

「隼人の髪の毛ってサラサラだね。いつもはカチッとしてるから硬いかと思ってた」

「普通じゃない?」

「プライベートな隼人の姿を見るチャンスなんてなかなかないもん」

「そんなことないだろ。最初に石垣島に来た時一緒の部屋だっただろ。あの時はどうしようかと思ったよ。奈々美は合宿だというし、パジャマ姿にスッピンを見せられた俺は手を出せない苦しさから悶え死にそうだったよ。それなのにお前はビール飲んだら寝ちゃうしさ」

「アハハ。ごめんね。でも私だってドキドキしてたよ。だから飲むっきゃない、と思ってさ」

「やり方が男前だな」

「もう!」

「でもそんなお前だから惚れたんだけどな」

ドライヤーを持つ手を掴まれ、引き寄せられた。
そのまま隼人の膝の上に座らされ首元へのキスが落とされた。

「あの時どれだけこのパジャマから見える素肌にドキドキしたか……」

パーカーの裾から手が入り込んできた。
背中に手が回りブラのホックが最も簡単に外された。
緩んでしまい不安になるとすぐに隼人の手が私の胸へと上がってきた。
優しく包み込み触られるとお腹の奥がキュンと疼く。

あぁ…
声にならない声が出てしまう。
すると隼人が私の口を塞ぎ、深いキスを始めた。
隼人の膝にいる私は隼人を見下ろすような形になり、隼人が私を見上げながらキスをしている。
隼人の手は私の体を触り始めると、つい動いてしまう。

どうしよう。
ドキドキが止まらない。

隼人は攻め立てるようにキスをやめない。

あぁ…ん…

吐息が漏れる。

隼人は私を抱き抱えるとベッドに連れて行き横にした。
すると隼人は着ていたTシャツを脱ぎ捨て上半身が露わになった。
隼人は細いわりにがっちりしているなっていつも抱きついていたからなんとなく知ってた。
バランスの取れた体にベッドで横になりながら見とれてしまった。

「そんなに見るなよ」

そういうと隼人は私に覆いかぶさり、パーカーを持ち上げ始めた。
隼人の舌はお腹の方から舐め上げ、胸に向かっていった。
手は私のパーカーをいとも簡単に脱がせてしまう。そして何もなくなった私の体に直接隼人の体温を感じる。

隼人に耳元で「愛してる」と囁かれ私のお腹の奥がさらに疼いてくる。
隼人に抱きつき「私も愛してるの」というと隼人はビクッとした。

「奈々美、やばい。優しくしたいのに早く繋がりたい」

そういうと性急に下も脱がされた。
早く繋がりたいと言っていたのに、隼人は優しくリードしてくれる。
足を開かされ、隼人が入り込むと一気に恥ずかしくなる。
隼人に刺激され、優しく舐め上げられると声を我慢できなくなった。

あぁ…
はぁ…ん…

「奈々美、入ってもいい?」

私は頷くと隼人が優しく私の中に入ってきたのが分かった。

「奈々美の中、あったかい」

「あ…ん。隼人、ギュってして」

私がおねだりすると隼人はそのまま抱きしめてくれた。
耳の後ろや額、鼻、ほほ、首筋とキスを落とされていく。

「奈々美、動いていい?」

私はまた頷いた。
すると隼人は打ち付けるように突き上げてきた。

吐息がこぼれ落ちる。
下から見上げる隼人の初めての男の顔にまたお腹の中が疼く。
果てた後、隼人はそれでもなお私の体から手を離すことなくずっと触れていた。

「奈々美、やわらかいな」

「それって言っちゃダメなことじゃない?泣きたくなる」

「太ってるんじゃない。むしろ痩せてる。けど俺と違ってふんわりしてるなって」

隼人の胸に顔を埋め抱きつく私に、背中に手を回してくる。
するとモゾモゾとまた触れてくる。

「ごめん、触りたくて止まらない。もう少しだけこの幸せを実感させて」

隼人ってこんなに甘かったんだ。
もっとクールな付き合いなのかと思ってた。
けど付き合い始めて隼人の甘さに驚いた。
そして今日こうして一つになれてまた隼人の甘い顔を見ることができた。

私も幸せで隼人に抱きつかずにはいられなかった。

しばらく話していると、隼人はモゾモゾと布団の中に入り込み胸を揉みしだき始めた。胸を舐め始め、吸われると私の声が漏れた。

「奈々美、もう一回しよ」

その声で私たちはまたお互いを求め長い夜となった。


< 83 / 84 >

この作品をシェア

pagetop