嘘は溺愛のはじまり
――隣で私を抱き締めたまま眠る伊吹さんの美しい寝顔を見つめながら、今まで生きてきた二十数年のなかで、いまが一番しあわせだな、と思う。
それと同時に、このしあわせがずっと続くと良いのに、と願わずにはいられない。
――ピピピピ、ピピピピ……
目覚ましのアラームが鳴る。
時計へと手を伸ばすと、私よりも先に、伊吹さんの長い腕が目覚まし時計へと到達してアラームを止めた。
「……おはよう、結麻さん」
「おはようございます……」
「……今日は結麻さんはお休みしていいよ」
「……え?」
さっき私よりも先にアラームを止めた伊吹さんの手が私の背中へとまわされ、ギュッと抱き締められた。
「昨日の今日だし。野村さんには俺から言っておくから、」
「い、行きますっ。大丈夫ですから」
「でも、」
「お休みしません」
「……分かった。じゃあ……」
伊吹さんは一度腕を緩めて私の顔を覗き込んだ後、もう一度私を抱き締め直す。
「今日は俺も結麻さんと一緒に出勤するから」
「ええ?」
「あと、俺たちの関係も、周りに話していきたいと思ってる」
「え、っと……」
「結麻さんは俺のものだってちゃんとみんなに分からせておかないと、また不埒な輩が結麻さんに近づくかも知れないし」
「あ、の……」
「大丈夫、俺がちゃんと全部みんなに説明するから。結麻さんはなにも心配しなくていいよ」
朝からとっても心臓に悪い。
ちゅ、と額にキスが落とされ、思わず呼吸が止まる。
それに比例するようにドキドキがますます加速するから、苦しくて仕方がない。
こんなにしあわせな苦しさがあるってことを、私は生まれて初めて知った気がする……。