嘘は溺愛のはじまり
「もうほんと、大正解だわー」
「野村さんっ、もうやめてください~っ」
「あはは、照れてる照れてるー! かわいー!」
野村さんにポフポフと頭を撫でられ、まるで子犬にでもなった気分だ。
……でも、本当に、とても嬉しい。
大好きな職場の先輩に、そんな風に思ってもらえていて。
「……で、さぁ。若月ちゃんが同棲してるのって、もちろん専務と、だよねー??」
「あっ、あの……っ」
「え? まさか、違うの??」
「いや、あの、そう、ですけど、同棲ではなくて、」
「あーはいはい、世間ではそれを同棲と言うんですー。もう、愛されちゃって」
「……」
もう返す言葉は見つからず、私は顔を赤くして金魚みたいに口をパクパクさせるだけだった。
野村さんに勝てるはずもない……。
「あ、そうだ、急に仕事の話しになって申し訳ないんだけど、今日の午後は役員会議をすることにになったらしいから」
「あ、はい、分かりました」
「……多分、昨日の件を話し合うんだと思う」
「……」
「ちゃんと処分してもらわなきゃねー、アイツ。セクハラ部長。ああ、もう部長じゃなくなるよね、きっと」
どう言う処分が下されるかは私には分からない。
きっときちんと社内規定にのっとったかたちになるだろうと思う――。