嘘は溺愛のはじまり
知らないところもたくさんあるが、きっと、それを知っても嫌いになったりなんかしないだろうと思えるぐらいには彼女のことを想っている自信がある。

だから俺は、普段から思っている通りのことを全て口にした。

……いや、しようとした。

だが、まだほんの序盤で、なぜか結麻さんに遮られてしまった。


しかし、耳まで赤く染めて恥ずかしがる彼女の可愛さに降参し、俺は彼女の制止を聞き入れて口を噤んだ。


正直、言い足りない。好きすぎる。


だが、彼女はどうだろう?


俺のことを、どう思っているだろうか……。

何も悪いことをしていないような顔をして、裏では、彼女をがんじがらめにするために奔走している、愚かで計算高い男を、彼女はどう見ているのだろう。


母からの追求を逃れるために、彼女はきっと適当に当たり障りのない嘘を言うだろうと予想していたから、彼女が思ったよりも饒舌に理由を口にし始めて、俺は少し驚いた。

たとえ本心でないにしても、もしかするとどれか一つぐらいは本当の気持ちがあるのではないかと思ってしまう。


いや、出来れば全てが彼女の本心であってくれれば、と、思ってしまう……。

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