嘘は溺愛のはじまり
両親のなれそめを詳しく聞いたことはないが、知り合ってから結婚までたったの1ヶ月というスピード婚だったことだけは知っている。

自分も思い当たる節がある母は、どうやら納得してくれたようだった。


母のことだ、恐らく、本当に一緒に住んでいるかどうかを確かめに来るだろう。

そう思っていた通り、それからすぐに母は俺の元を訪ねてきた。


結麻さんに「俺の恋人になって欲しいんです」と告げると、目を丸くしたあとすぐに頬を赤く染める。

どんな表情も愛らしくて今すぐ抱き締めたくて仕方がなかったが、ここで怖がられてしまえば全てがダメになってしまう。

いまは我慢だ。


なんとか彼女と“恋人の真似事”をすることと、お互い下の名前で呼ぶことも了承してもらえた。

ここまで全て俺の思惑通りだったと結麻さんに知られたら、彼女はどう思うだろうか。

間違いなく嫌われてしまうだろうから、絶対に秘密にしなければならない。

いままで起こったことも、これから起こることも、全て俺の仕組んだことだと、絶対に気づかれないようにしなくては……。


それにしても、母の言動にはいつも驚かされる。急に「お互いの好きなところは?」と聞いてきて……。

もちろん、彼女の好きなところなんて、山ほどある。と言うか、ほとんど全部が好きだ。
< 220 / 248 >

この作品をシェア

pagetop