何も言わないで。ぎゅっと抱きしめて。



「隼輔、今日はパパがご飯作ってあげるよ。何食べたい?」


「えっと、えっとぉ……おしゃかなしゃん!」


「お魚さんかあ。じゃあ買い物行ってから帰ろうな」


「うん!」



したったらずの話し方も最初は上手く聞き取れなかったものの、最近は隼輔の言いたいことが少しずつわかるようになってきた。


それもこれも、全部舞花が隼輔のことを教えてくれて俺たちの仲を取り持ってくれるからだ。



「ままはぁ?」


「ママはお仕事でちょっと遅れてるんだ。今日はパパと二人でご飯なんだけど、いいか?」


「うん。いーよ!」


「ははっ、ありがとうな」



頭を撫でてからドアを閉め、運転席に乗り込んでそのまま魚を買いにスーパーへ。


隼輔リクエストの魚がどれがいいのかわからなかったものの、確か前に舞花が焼き鮭をあげていたのを思い出す。付け合わせのサラダ用の野菜も買って家に帰ると、すぐにグリルに鮭をセットしてサラダを作った。


その間も隼輔は家の中を走り回る。


いつもなら舞花が作っている合間に俺が一緒に遊んでいるけれど、今日はそうはいかないため声をかけながら慌ただしく動いていると、今まで舞花がどれだけ苦労しながら子育てと仕事を両立していたのか、その大変さを改めてまた実感した。


俺にできることは何でもしてやりたい。丁寧に骨を取って身をほぐした焼き鮭を嬉しそうに頬張る隼輔を見ていたら、二人に対する愛おしさと舞花への感謝が溢れてくる。



「ぱぱ!みてぇ〜」


「ん?おぉ、ぐるぐるしたのか?上手に描けたなあ」


「うん!ぱぱにあげる〜」


「ありがとう隼輔」



その小さな笑顔を、この手でずっと守りたい。



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