何も言わないで。ぎゅっと抱きしめて。


「いつ迎えに行くんだ?」


「明日。朝イチ行こうと思ってたらお母さんに昼過ぎに来いって言われたからそうするつもり」


「そうか」



隼輔に会えない寂しさに胸をキュッとさせながらも隼也の運転で向かった先。それは隼也のマンションだった。


近くにあるコンビニで泊まるために必要なものを適当に買い揃えてから隼也の部屋に向かう。



「ここも三年ぶりだ」


「家具もちょっと変えたからあんまり懐かしくはないかもしれないけど」


「ううん。しょっちゅう来てたもん。やっぱり懐かしいよ」



隼也の言う通り、家具がいくつか新調されており見慣れない空間ではあったものの、やはり変わらないところもあるため一瞬であの頃を思い出す。



「この三年間、結局誰とも付き合う気になれなくてさ。家事スキルだけどんどん上がってったわ」


「そうなの?」


「あぁ。舞花のことが忘れらんなくて」



へらりと笑った隼也は私をソファに座らせると、ホットミルクを用意して持ってきてくれた。



「ありがとう」



受け取って一口飲むと、柔らかな甘さが身体に染み渡る。


隼也も隣に座って同じようにマグカップを口に傾けていた。


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