猫目先輩の甘い眼差し
短く返事をし、視線を落とす。
1番の理由は、悲しい気持ちにさせたくなかったからなんだけど……。
「前に、獣医を目指したきっかけを話したじゃないですか。あれ……両親のことなんです」
バイクに乗せてもらい、先輩の育った町に遊びに行った日。
『大切な存在を亡くした時の後悔を、少しでも軽くできるお手伝いができたらなと思った』
この思いを抱くきっかけとなったのが、両親である父と母だ。
「実は、まめおが亡くなった時、1年くらい落ち込んでで。猫チョコ事件の時は既に乗り越えてたんですけど、また悲しい思いをさせちゃうのは苦だろうなと……」
乗り越えて、やっと前を向き始めたって時だったから、どうしても言えなかった。
「1年は長いね……。市瀬さんのペットロスはどれくらいだったの?」
「1週間です」
「えっ」
驚愕した様子で目を見開いた零士先輩。
そうだよね。早いよね。
同じ時間を過ごしたのに、1年と1週間って、あまりにも極端だ。
「どうして、こんなにも差が?」
「多分……後悔の念の強さだと思います」