猫目先輩の甘い眼差し


零士先輩が言った通り、ただ驚いただけかもしれない。

だけど……。


『良かったね。おめでとう』


あの声色で、表情で、驚いていたようには見えなかった。

目を丸くしていた月香ちゃんと比べて、全く動じてなかったし。

今まで何度か相談に乗ってもらっていたからというのもあると思うけど。


仮説を話して熟考した結果、しばらく様子見ということに。


前回と同様、今日もいつも通り挨拶してくれたから、やっぱり私の思い違いなのかな……。



「あっ、足止めしちゃってごめんね!」

「いえ。それより、市瀬さん大丈夫? この後零士さんと会うんじゃ……」

「大丈夫大丈夫! 一ノ瀬くんにちゃんと許可取ってるから!」



心配して声をかけてきた彼に、朝日先輩が光の速さで返答した。


2学期に入ると忙しくなりそうだから、今日くらいしかゆっくり話せない。だから会わせてほしい。

そう零士先輩に頼み込んだらしい。


私も、尾行したことを直接謝りたかったので、お願いして少しだけ時間をもらったのだ。


仲直りした後、近況を報告し合うのかなと思ったら、まさか唐揚げを奢ってもらうことになるとは。

もうちょっと話したいところだけど、先輩待ってるだろうし。この辺でおいとましよう。
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