西岡三兄弟の異常な執着~After Story~
屋敷内の、一階リビング。

一番奥の大きなソファに黄河。
その前のカウチソファに朱雀と真白。
その向かいに紫苑が座っている。

四人共煙草を吸っていて、かなり機嫌が悪い。
いや………
機嫌が悪い程度なら、まだいい。
それよりも、残酷な程に恐ろしい雰囲気を醸し出している。

扉の前に森宮が控えていて、その前に秀実と友人達が立って震えている。

「ご、ご主人様、若様、坊っちゃま、紫苑様!
申し訳ありませんでした!
花苗様にも謝りますので、許してください!」
秀実が震えながら、必死に言葉を繋ぐ。

「君ってさぁ、ほんっと、バカだね!」
紫苑がため息混じりに言った。
「バカでしょ!最初からバカっぽかったし!」
真白がバカにしたように言った。
「許されるわけがないだろ。
花苗を傷つけるなんて、一番あり得ない行為だ」
黄河が秀実達を見据えて言う。


「あ、あの…」
友人の一人が恐る恐る口を挟む。
「何?」
「秀実は、黄河様の奥様なんですよね?」
「あ?」
黄河の鋭い目。

「あ、す、すみません!」
「申し訳ありません。
黄河様、朱雀様、真白様は、花苗様や紫苑様、あと伯父様から以外は名前を呼ばれることを、極端に嫌います。異様に思われるでしょうが、ご主人様、若様、坊っちゃまとお呼びください」

「ご、ご主人様は、秀実と結婚してるんですよね?」
「はい。
でも……戸籍上だけです。
秀実さんは、この屋敷の使用人です。
先程いた、水樹や塩見と同じです」
「嘘……あと…西鷹組って……」

「ご主人様達の伯父様で、紫苑様のお父様は西鷹組の組長です。
若様は、若頭。
紫苑様は、若頭補佐です」
森宮は淡々と答えていく。

「う、嘘……
“あの”西鷹組の…?」
それには、秀実も心底驚いている。

「でも…一番、あり得ない……」
友人の一人が、呟いた。

それもそうだ。
朱雀と紫苑。
二人共どちらかと言うと、そんな世界とは縁がない程の穏やかさや柔らかさを持っている。

「フフ…そうだよねー!
どっちかっていうと、黄兄さんや真白の方がそれっぽいでしょ?」
紫苑がフフ…と笑って言う。

「いや…俺からすりゃあ、朱雀と紫苑が適任だぞ!
キレた時の話だが!」
黄河もフッと笑って言う。
「特に!朱兄ちゃんは、ヤバいよ!?」

煙草を灰皿に潰した真白が、目だけ秀実達を見て言った。
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