婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~
「私、宗一郎くんが結婚するまであなたの話を聞いたことがなかったんだけど、婚約前から面識はあったの? 本当は隠れて付き合ってたとか、どちらかがずっと好きだったとか」
「いいえ」
杉咲は退屈そうに口を尖らせた。
「ふーん。あなたは茅島頭取の娘さんだもの。実は宗一郎くんが常務だった頃から、あなたのことを気になっていて、社長就任を条件に婚約を許されたって話ならいいのにって、考えてたの。私がそのエピソードを記事にしてあげたら、みんな宗一郎くんを好きになっちゃうと思うな」
宗一郎と杉咲には、どのくらいの付き合いがあるのだろう。
多々良がホーズキの社長に就任した五年前から杉咲と懇意にしているとすれば、本当に宗一郎とも親しいのかもしれない。
鬼灯禅に目をかけられていた多々良には、社長になった当時はまだ、宗一郎との対立もなかったはずだから。
宗一郎と杉咲を、多々良が引き合わせていたとしても不思議はない。
「でもあなたは、宗一郎くんのことが好きなんでしょ?」
その質問に、奈子は少しためらった。
惨めな気持ちで目を閉じる。
宗一郎にさえ、まだちゃんと伝えていない。
記事の中で杉咲に言い当てられるまで、誰にも教えなかった秘密なのに。
「はい」