婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~
鬼灯グループの年次開発者会議は毎年五月に開催され、全世界に向けて報道される。
中央研究所の成果を中心とした最新技術を披露するためのイベントで、ここ数年はオンラインでも配信していた。
メディアの注目も高く、過去には量子重力理論の研究者である八雲埃も出席している。
多々良は毎年必ず基調講演を行なっていたのだが、宗一郎はこれまで一度も登壇したことがなかった。
「いいけど、まだ顔を売るつもりなんですか。あなたもう十分、俳優みたいに人気ですよ」
京は完全に怪しんでいる。
宗一郎がテレビや雑誌の取材に答えていたのは、そこそこ見栄えのする容姿を利用して、鬼灯グループのブランドイメージを回復させるためだった。
今ではほとんど目的を果たしたので、これ以上顔をさらす理由はない。
派手にするのは今度が最後になるだろう。
「リリースもよろしく。もちろん、質疑応答もさせてくれ」
それですべて、宗一郎の思い通りになる。
宗一郎は組んだ脚を戻して立ち上がり、警戒するいとこに手を振って書斎をあとにした。
◇ ◇ ◇
奈子が仕事から戻ると、宗一郎が家で待っていた。