婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~
奈子はまともに口がきけなくなって、溺れたように息を吸った。
「あ、えっと、デート、でしたか。なるほど」
「それが答え?」
宗一郎が笑っている。
頬がパッと赤くなる。
奈子はまつげを伏せてうつむいた。
「私も行きたいです」
「正解」
宗一郎が満足そうにうなずいてドアノブに手をかける。
うしろをふらふらとついてきていた奈子は、その先がベッドルームだと今になって気がつき、慌てて足を踏ん張った。
「あ、あの! 私、今日はゲストルームを使います。荷物もあっちの部屋にあるし」
ぼーっとしているうちにうっかり通り過ぎてしまったゲストルームのドアを指さして、廊下を引き返そうとする。
宗一郎は腕を離さなかった。
怪訝そうに片方の眉を上げる。
「荷物? 眠るのに必要か」
きっと必要だ。
奈子は必死にうなずく。
宗一郎がスッと目を細め、奈子の手を引っ張った。
力強い腕に抱きとめられたかと思うと、ドアに体を押しつけられ、鼻の先に立った宗一郎が行く手を塞ぐ。
背中にぴったりとくっついたドアのうしろの寝室が、ほかの部屋に比べるとそれほど広くはなく、照明は淡いブラケットライトで、その下にキングサイズのベッドが一台置いてあるだけだということを、奈子はちゃんと知っている。